プロローグや1話はこちらのリンクから。



家での勉強時間で
母から毎日怒られていた私。

私が2年生に上がった頃には、
母の怒りは勉強時間だけでは
収まらなくなっていた。


毎日の生活の中で、
言うことを聞かなかったら怒られる。
何かをこぼしたら怒られる。
出来ない事があると怒られる。
母がしてほしい事をしないと怒られる。

怒られるけれど、
きっちり最後まで相手をしてくれて、
結局は全て母が解決してくれる。

そして、最後には、
「ほら、お母さんの
言った通りだったでしょ?」
と納得させられる。


こんな風に聞くと、

“ごく普通の家庭で
子供に躾をしている
普通のお母さん”

という印象を受ける人も居るだろう。


しかし、何かが違った。


学年が上がり、
私も成長していく中で、

私は母から怒られる事が嫌で、
“どうすれば怒られないのか”を
いつも考えるようになっていた。

もちろん
母の言うことを聞き続けるのが
1番良いのは分かっている。

なので、
俗に言う“お利口さん”な子になって、
怒られないように過ごした。


しかし、母の怒りは
それだけでは抑えられない。

気を付けてはいても、
私の不注意で、

忘れ物をしたり、
飲み物をこぼしてしまったり、
母が気にくわない事を言ってしまったり。

そんな時には、
母の怒鳴り声が響く。


そんな毎日が続くと、
母が怒るであろう内容は
母には何も話せなくなり、
私は隠すようになっていた。

時には嘘をついて。


失敗は隠せば怒られない。
嘘で誤魔化せば怒られない。

少しずつ私は
変な自信を付けていった。

全ては
「お母さんから怒られたくない」
という一心で。


そんなある日。

給食で使う“箸箱”を
学校に忘れてきてしまった。

母に洗ってもらって、
明日も学校で必要な物。

しかし、忘れた事を
母に話すと絶対に怒られる。


私は、母には何も言わずに、
明日学校で自分で洗おうと決めた。

そして、
寝る時間まで母にバレないか
ビクビクしながら過ごし、

寝る時間になって、
そそくさとベットに入った。


子供ながらに、

早めに布団に入ると不自然で
勘の良い母は何かあると気付くだろう。

できるだけいつも通りの雰囲気で
自然に寝て朝を迎えよう。

そう思っていた。


しかし、母にはかなわない。


私が布団に入ってすぐ、

「えりかー!箸箱は?
まだ出してないでしょ?」

食器洗いを始めた母が気付いた。


私はとっさに、

「出したよ!」

と嘘をついた。

絶対にバレる嘘なのに、
「忘れた」の一言が
怖くて言えなかった。


「えー?どこ?無いよ?」

母はシンクの中を探している。

私は何も答えられず、
眠いふりをして寝ようとした。


母は何かに勘付いたのか、
私のベットまで来て、
強い口調で尋問を繰り返した。

「本当に出したの?」
「何時頃に出した?」
「どこに出した?」

たった箸箱1つのことなのに。


母の強い口調と
返答できない自分に
涙がでてきた。

そして、
「学校に忘れた」
小さい声で白状した。

私が嘘をついていたという事実で、
母の怒りは沸点に。

泣いている私は
母に服を引っ張られ、
庭に追い出された。

夜9時頃で肌寒い季節だった。


30分か1時間が経った頃、
母はまだ怒りながら、
「もう入って寝なさい。」

こうして私は
ぐったり泣き疲れた状態で
眠りに落ちた。


こんな風に、
毎日母に怯えながら
過ごしていた私の記憶。


勉強に関しては、
更にスパルタ教育だったので、

勉強の時間が
苦痛でたまらなかった。

母から決められたルールである、
学年ごとにページ数が増える“宅習”

母にチェックされるのが嫌で、
私はノートを隠して、
宅習帳をなくしたフリをする。

もちろんバレると
容赦なくビンタが飛んでくる。


そんな風に、
母に怯えながらも
反抗して闘っていた私。

“嘘で誤魔化す”という
悪い癖が付いてしまった私。


良いも悪いも判断できず、
小学生の私にはそれが精一杯だった。

母を怒らせたくない。
優しく笑っていてほしい。

それが私の願いだった。


つづく